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White Note: Alberto Giacometti

2016
紙やすりで表面を削ったスイス・フラン紙幣
15.9 x 7.4 cm

永世中立国スイスの通貨は、世界でも最も安定した通貨として知られ、その紙幣は偽造が極めて難しい。100フラン紙幣にはジャコメッティの肖像と彫刻が印刷されている。ストイックで清貧な芸術家が紙幣の絵柄とされることの皮肉。スイスのアートフェアへの出品に際し、私は彼の紙幣を削ることにした。ジャコメッティが探求の末に彫刻を極細へと削っていった逸話に絡め、額面の金額が保証された貨幣の衣を削ぎ、不定のバリューとして、アートの衣をまとわせた。

地球から眺めた月と太陽はほぼ同じ大きさに見えるが、実サイズでは400倍の差がある。統計データによれば、世界の資産額トップの人口1%の総資産と残りの人口99%の総資産はほぼ同じ額と言われる。人々は体重や身長では大きく違わなくとも、抱える資産には月と太陽の比率を凌駕する差がある。アートフェアにはそうした資産家も訪れるだろう。

多くの場合、資産を増やすことを期待して作品は購入される。あるいはスイスの特性を利用した租税回避や資産の隠蔽と似たような構造でアートは利用される。しかしながらアートはある面で資産家の資産を削る行為でもある。資産家が健康や美容の意識から体重を減らそうと努めるように、資産へのダイエットの意識から作品を購入する場合もあるだろう。だがそれは名声を増やすためでもある。そして一部のアーティストは大層な資産家になる。飢餓で痩せ細った者よりもさらに細いジャコメッティの彫刻は昨年のオークションで1億4,128万5,000ドルと、彫刻作品としての史上最高落札価格で落札された。