Writing

「経済原理」端書き

HAPS「ニューパトロン、ニューアーティスト」へ寄せて

橋本聡2018

たとえば、あなたが手に持つそのスマフォは誰のものでしょう。スマフォを誰かに貸すとき、手に握る者と、手放した者のどちらの方が所有してると言えるのか。路上で眺めていたスマフォが奪い去られたとき、それは誰のものになるのでしょう。紙幣は所有歴が記されることなく、人々を渡り歩きますが、スマフォには、多くのあなたの情報が記され、あなたとそのスマフォの結びつきを証拠づけようとします。だからと言って、なぜそれはあなたのものなのでしょうか。

お金を渡せば食料も衣服も土地も所有することができ、賃金を払えば労働力を購入することができると。ではお金以外ではどのようにして所有者になることができるのでしょうか。食料なら栽培するか、狩りをするか、人工物なら自ら作るかでしょうか。しかしその材料や土地は既に誰かのものとなるでしょうし、法的所有者がいないとしても何かから奪わざるをえません。その肉や果実はどのような経緯で手に渡り、その土地はどのような経緯で占拠されるのか。暴力によってか、権力または権利によってか、貨幣によってか、贈与によってか。店で食料を奪い、胃に入れる。それは誰のものなのでしょうか。

いま立っているその場は、法的所有者でも政府でもなく、金銭を介してなり不法なりであっても、その時そこに居るものが占拠しています。ものも、場も、所有は既定的ではありません。あるいは所有というのは方便であり、流動的な占拠しかないとも言えるでしょう。

場(建築物)が行為を可能にするのではなく、行為がその都度、場をつくりだします。場は不動ではなく漂流します。楔を深く打ち込み、コンクリやら制度によって四方を囲い込むようなものは、空間を監禁し腐らせる、でっち上げの場と言えるでしょう。それは防腐剤やポリスにまみれています。

あなたがもし、住居を所有するならば、それは誰かから奪ったものではないでしょうか。鞄の中だけでなく、あなたが色々と衣服をまとい隠すものは何でしょう。あなたがもし、眼でも口でも足でも、2つ持つならば、あるいはひとつでも持つならば、それは誰かから奪ったものではないでしょうか。あなたがもしも「あなた」として既定的であるならば、楔を深く打ち込み、四方を囲い込むようなでっち上げのあなた(場)としてあるのではないでしょうか。